ジョブジョブ 転職ノウハウ

「10の姿」とは?幼児期までに育ってほしい姿と保育の実践ポイント

「10の姿」とは?幼児期までに育ってほしい姿と保育の実践ポイント

保育士や幼稚園教諭、そして子育て中の保護者の皆様は、「10の姿(幼児期の終わりまでに育ってほしい姿)」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。2018年(平成30年)の保育所保育指針などの改定により導入されたこの指標は、現代の幼児教育・保育において最も重要なキーワードの一つです。

しかし、「10個すべてを暗記するのが大変」「日々の保育や月案にどう落とし込めばいいかわからない」「小学校入学前にすべてできなければならないの?」といった疑問や不安を抱える方も少なくありません。

この記事では、「10の姿」の基本的な意味や導入された背景から、10項目それぞれの具体的な子どもの姿、そして現場での保育のポイントまでを網羅的に解説します。この記事を読むことで、10の姿が単なる「到達目標のチェックリスト」ではなく、子どもの成長を捉え、小学校教育へと滑らかに接続するための「羅針盤」であることが深く理解できるはずです。

そのまま日誌や指導計画の作成にも役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

1. 「10の姿」とは?(幼児期の終わりまでに育ってほしい姿)

「10の姿」とは、正式名称を「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」と言います。これは、子どもが保育園、幼稚園、認定こども園などの幼児教育施設で過ごし、小学校へ入学する前(5歳児の後半ごろ)までに、遊びや生活を通して「どのような姿に成長していくことが望ましいか」を10の視点からまとめたものです。

日本の幼児教育は「遊びを通した総合的な指導」を基本としています。ドリルやテストで測れる認知能力だけでなく、コミュニケーション能力や思いやり、探究心といった「非認知能力」をバランスよく育むための具体的な指標として、この10の姿が設定されました。

2. なぜ導入された?「10の姿」の背景とデータ

「10の姿」は、2018年(平成30年)4月に施行された3つの教育・保育に関するガイドラインの同時改定に伴って明記されました。

【表1:2018年改定の対象となった3つの指針・要領】

施設の種類ガイドライン名称管轄省庁対象となる子ども
保育所(保育園)保育所保育指針厚生労働省0歳〜小学校就学前
幼稚園幼稚園教育要領文部科学省満3歳〜小学校就学前
認定こども園幼保連携型認定こども園教育・保育要領内閣府0歳〜小学校就学前

これまで、保育所、幼稚園、認定こども園は管轄する省庁が異なり、それぞれ別の指針を持っていました。しかし、どこの施設に通っていても、子どもたちが就学前に身につけておくべき資質や能力に差があってはなりません。そこで、日本の歴史上初めて3省庁が連携し、「幼児教育の共通の枠組み」として「10の姿」が策定されたのです。

背景には、いわゆる「小1プロブレム」の存在があります。文部科学省の調査等でも、小学校入学後に集団生活に馴染めず、授業に集中できない児童の増加が課題とされてきました。幼児期の「遊び中心の学び」から、小学校の「教科中心の学び」への段差をなくし、滑らかな接続(保小接続)を実現することが、10の姿が導入された最大の理由です。

3. 【一覧表】幼児期までに育ってほしい「10の姿」と具体例

まずは、「10の姿」の全体像を把握しましょう。以下の表は、10の項目それぞれの概要と、実際の保育現場で見られる具体的な子どもの姿(5歳児クラスのイメージ)をまとめたものです。

【表2:「10の姿」の一覧と保育現場での具体例】

番号10の姿の項目名概要・育つ力具体的な子どもの姿(例)
1健康な心と体充実感をもって自分の体を動かし、健康・安全な生活をつくり出す力。外遊びで思い切り走り回り、「手洗いうがいをしよう」と自ら進んで行う。
2自立心自分で考えて行動し、困難なことにも諦めずに挑戦しようとする力。難しい折り紙に失敗しても、「もう一回やってみる」と最後まで取り組む。
3協同性友達と目的を共有し、役割分担しながら協力して物事を成し遂げる力。お遊戯会の小道具作りで「僕が色を塗るから、〇〇ちゃんは切って」と相談する。
4道徳性・規範意識の芽生え善悪の判断や、集団のルールを守り、他者を思いやる心。順番抜かしをした子に「順番だよ」と教えたり、ルールを守ってゲームを楽しむ。
5社会生活との関わり家族や地域の人々と親しみ、公共の施設などを大切にする社会性。散歩中に出会った地域の人に元気に挨拶をしたり、公園の遊具を大切に使う。
6思考力の芽生え物の性質や仕組みに興味を持ち、予想したり工夫したりする力。「砂場に水を流したらどうなるかな?」と考え、友達と試行錯誤しながら川を作る。
7自然との関わり・生命尊重自然の美しさや不思議さに感動し、動植物の命を大切にする心。飼育している虫に「ご飯食べるかな?」と葉っぱをあげ、優しく観察する。
8数量・図形、標識や文字などへの関心・感覚日常生活の中で数、形、文字などに触れ、それらを使って遊ぶ楽しさを知る。「おやつを3個ずつ分けよう」「〇〇ちゃんの名前の字だ」と生活の中で発見する。
9言葉による伝え合い自分の経験や思いを言葉で伝え、相手の言葉も注意深く聞こうとする力。「昨日こんなことがあってね」と嬉しそうに話し、友達の話にも耳を傾ける。
10豊かな感性と表現心を動かされた出来事を、絵、音楽、身体など多様な方法で表現する力。楽しかった遠足の思い出を、画用紙いっぱいに色鮮やかな絵の具で描く。

4. 【分野別】「10の姿」の詳しい内容と保育のポイント

10の項目は、バラバラに独立しているわけではなく、相互に深く関連し合っています。ここでは、理解しやすいように4つの分野に分類して、それぞれの保育のポイントを解説します。

心身の基盤となる姿(健康・自立心)

子どもが社会に出るための最も基本的な土台となるのが「健康な心と体」と「自立心」です。

身体的な発育だけでなく、「自分でやってみたい」という内面的な欲求をいかに引き出すかが重要です。保育者は、子どもが自ら選び、決断できる環境(おもちゃの配置や時間のゆとり)を整えることが求められます。先回りして手伝いすぎるのではなく、子どもが試行錯誤する時間を保障し、達成感を味わえるように見守りましょう。

他者や社会とつながる姿(協同性・道徳性・社会生活)

「協同性」「道徳性・規範意識の芽生え」「社会生活との関わり」は、自分以外の他者との関わりの中で育まれます。

幼児期の後半になると、自我がぶつかり合うケンカが増えますが、これは協同性や道徳性が育つ重要なチャンスです。大人がすぐに介入して解決するのではなく、「どうすればよかったかな?」と子どもたち自身でルールを作ったり、相手の気持ちに気づいたりするような問いかけを重視してください。

知的探求心を育む姿(思考力・自然・数量/文字)

「思考力の芽生え」「自然との関わり・生命尊重」「数量・図形、標識や文字などへの関心・感覚」は、後の小学校での各教科(算数、理科、生活科など)の基盤となる能力です。

ドリルを使ってひらがなを暗記させるような早期教育を意味するものではありません。例えば、「どんぐりがいくつ拾えたか数える(数量)」「影の長さが変わることに気づく(自然・思考力)」といった、遊びや生活の中での実体験を伴う気づきを保育者がすくい上げ、共感することが最大のポイントです。

表現とコミュニケーション(言葉・豊かな感性)

「言葉による伝え合い」と「豊かな感性と表現」は、インプットした感情や思考をアウトプットする力です。

子どもが「見て!」「あのね!」と発信してきたとき、保育者が受容的に聞く態度を示すことが言葉の育ちの基本です。また、絵画や造形、音楽活動において「上手・下手」で評価するのではなく、その表現に至るまでの子どもの心の動きやプロセスを認め、褒める保育を心がけましょう。

5. 保育現場で「10の姿」を活かすための実践ステップ

現場の保育士が「10の姿」を日々の業務(日誌や月案など)に落とし込むための具体的なステップを紹介します。

ステップ1:子どもの姿を観察し、事実を記録する

まずは「10の姿」という枠組みにとらわれず、目の前の子どもが何に興味を持ち、どう動いたかをありのままに記録します。

ステップ2:記録した姿を「10の姿」のレンズで紐解く

例えば、「ブロックで大きなお城を3人で作った」という事実に対して、「協力して作っていたから『協同性』だな」「崩れないように工夫していたから『思考力の芽生え』でもあるな」と、後から10の姿を当てはめて分析します。一つの遊びの中に、複数の姿が含まれていることがほとんどです。

ステップ3:次回の環境構成(指導計画)に繋げる

分析をもとに、「明日はお城の周りをもっと広げられるように、広いスペースと別の素材(空き箱など)を用意しよう」と、次の保育の展開を計画します。これが、10の姿を活用した質の高い保育のサイクルです。

6. 小学校との連携(保小接続)における「10の姿」の役割

前述した通り、「10の姿」は小学校教育との円滑な接続のために作られました。以下の表は、幼児教育と小学校教育の環境の違いを示したものです。

【表3:幼児教育と小学校教育の環境の違い】

項目幼児教育(保育園・幼稚園など)小学校教育(1年生〜)
学びの形態遊びを通した総合的な学び各教科等に基づいた系統的な学び
活動単位個別や少人数、自由な集団クラス単位の一斉授業
時間割生活の流れに沿った柔軟な時間45分授業など明確なチャイム区切り
評価プロセスや個人の育ちを重視学習指導要領に基づく目標の達成度

このように、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化します。

小学校の教員は、入学してきた子どもたちが幼児期に「10の姿」を通してどのような力を育んできたか(幼児期の終わりまでに育ってほしい姿)を理解した上で、1年生の1学期に「スタートカリキュラム(幼児期の遊びを取り入れた合科的な学習)」を編成します。

保育施設から小学校へ送られる「要録(保育所児童保育要録など)」にも、この10の姿の視点に沿って子どもの育ちが記載され、教員間の重要なバトンとして機能しています。

7. 注意!「10の姿」は到達目標やチェックリストではない

最後に、最も重要視しなければならない注意点を解説します。それは、「10の姿は到達目標ではない」ということです。

「卒園までにこの10項目をすべて完璧にできるようにしなければならない」と解釈するのは誤りです。子どもの発達には個人差があり、興味関心も異なります。ある子は「自然との関わり」が非常に豊かでも、「言葉による伝え合い」は少し苦手かもしれません。それで良いのです。

10の姿は、足りないものを探して「〇〇ができないから減点する」ためのチェックリストとして使うものではありません。子どもが今持っている良さや、伸びようとしている芽を見つけ出し、「この子は今、10の姿のこの部分が育ってきているな」と、成長を肯定的に捉えるための「保育者の視点(虫眼鏡)」として活用してください。

この記事のポイント

・「10の姿」とは、幼児教育を終えて小学校へ就学するまでに育ってほしい具体的な子どもの姿(方向性)を示したものである。

・2018年に幼稚園・保育所・認定こども園の3つの指針が同時改定された際に、共通の目標として導入された。

・目的は「小1プロブレム」の解消や、幼児期の遊びからの学びを小学校の教科教育へ滑らかに繋ぐこと(保小接続)にある。

・「健康な心と体」「協同性」「思考力の芽生え」など、認知能力と非認知能力をバランスよく含む10項目で構成されている。

・日々の保育日誌や月案では、子どもの遊びや生活の姿を記録した後に「10の姿」に照らし合わせ、次の環境構成に活かすと良い。

【最重要】 10の姿は「できているか」を測るチェックリストや到達目標ではなく、子どもの成長を前向きに捉えるための視点(道しるべ)として活用することが必須である。

なるほど!と思ったらシェアしよう!

この記事の著者

転職ノウハウなら!ジョブジョブ編集部

「転職ノウハウなら!ジョブジョブ編集部」は、医療、介護、保育の求人サイト「ジョブジョブ」の運営メンバーによる記事編集部門です。医療・介護・保育・福祉・美容・ヘルスケアの仕事に関わる方に向けた、今後のキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

あわせて読みたい記事

おすすめの新着求人