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【2026年最新】医療的ケア児とは?人数推移・家族の負担・支援法を徹底解説

医療的ケア児とは?人数推移・家族の負担・支援法を徹底解説

医療技術の飛躍的な進歩により、小さく生まれた命や重い疾患を抱えた子どもたちが数多く救われる時代になりました。その一方で、新生児集中治療室(NICU)などを退院した後も、自宅で人工呼吸器の装着やたんの吸引といった医療処置を日常的に必要とする「医療的ケア児」が年々増加しています。

厚生労働省などの調査データによれば、日本全国には現在約2万人を超える医療的ケア児がいると推計されています。少子化によって子どもの総数が減少しているにもかかわらず、医療的ケア児の数は過去約20年間で2倍以上に増加しました。かつては病院のベッドで長期間過ごすしかなかった子どもたちが、地域社会や家庭で暮らせるようになったことは、医療の発展がもたらした大きな希望の光です。

しかしその反面、在宅での生活を最前線で支える家族には、24時間体制の絶え間ない介護や、預け先が見つからないことによる深刻な就業問題(離職)など、非常に重い負担がのしかかっています。このような深刻な社会課題を背景に、2021年には国や自治体の責任を明確にした「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(通称:医療的ケア児支援法)」が施行されました。

本記事では、医療的ケア児の正確な定義や日々のケアの実態をはじめ、データで見る人数の推移、当事者家族が抱えるリアルな負担、そして新法によって地域社会がどう変わろうとしているのかを、網羅的にわかりやすく解説します。

1. 医療的ケア児とは?その定義と具体的なケア内容

医療的ケア児とは、日常生活や社会生活を送るうえで、経管栄養やたんの吸引、人工呼吸器の管理といった「医療的なケア」が日常的に必要な児童(主に18歳未満、または18歳以上で高等学校等に在籍している児童)を指します。

自分の力だけで呼吸をしたり、口から食事を摂ったりすることが難しい場合が多く、医療機器やケアの助けを借りることで命を維持し、安定した生活を送っています。障害の程度や必要なケアの種類は子どもによって全く異なり、活発に歩き回れるものの特定の時間だけケアが必要な子から、寝たきりで24時間体制の厳重な呼吸管理が必要な子まで様々です。

以下は、医療的ケア児が日常的に必要としている主なケアの種類をまとめた表です。

ケアの分類具体的なケアの名称と内容日常生活への影響と特徴
呼吸管理人工呼吸器:機械を使って肺に空気を送り込み、呼吸を補助する
酸素療法:酸素濃縮器などを使い、血中の酸素濃度を保つ
喀痰(かくたん)吸引:自力で出せないたんを吸引器で吸い取る
生命維持に直結するため、24時間体制での機器のアラーム確認や、外出時の重い予備バッテリーの携行が必須となります。
栄養管理経鼻栄養:鼻から胃へ通したチューブから栄養剤を入れる
胃ろう・腸ろう:お腹に開けた小さな穴から直接栄養剤を注入する
口から食事を摂る(咀嚼・嚥下)機能が弱い場合に用いられます。決められた時間に専用のルートから栄養剤を正確に投与する必要があります。
排泄管理間欠導尿:尿道にカテーテルを定期的に挿入し、尿を排出させる
ストーマ管理:人工肛門などの排泄物バッグを清潔に管理する
感染症を防ぐため、非常に清潔な環境での衛生管理が求められます。保育園や学校のトイレ環境の整備も重要になります。

これらのケアは、本来であれば医師や看護師などの医療従事者が行う「医療行為」にあたりますが、一定の研修や指導を受けた保護者であれば家庭内で行うことが法律で認められています。

2. 【データと表】医療的ケア児の人数推移と増加の背景

日本の総人口および子どもの数は年々減少していますが、それとは対照的に医療的ケア児の数は一貫して増加傾向にあります。厚生労働省の調査や関連団体の推計データを追うと、過去20年間でその数が劇的に変化していることがわかります。

以下の表は、在宅で生活する医療的ケア児の推計人数の推移と、その中でもとくに高度なケアが必要な「在宅人工呼吸器」を使用する人数の推移をまとめたものです。

調査年度医療的ケア児の推計人数うち在宅人工呼吸器を使用する人数
2005年度約9,400人約260人
2010年度約13,000人約1,100人
2015年度約17,000人約3,000人
2024年(直近推計)約21,000人(継続して増加傾向)

データから読み取れる通り、2005年に約1万人を下回っていた推計人数は、2024年には約2万1,000人にまで倍増しました。中でも特筆すべきは人工呼吸器を使用する子どもの急増です。2005年度から2015年度のわずか10年間で、人工呼吸器を必要とする子どもは約12倍に跳ね上がっています。

なぜ医療的ケア児は増え続けているのか?

この増加の最大の理由は「周産期医療(産科・新生児科)」や「小児救急医療」の飛躍的な進歩です。かつてであれば出産直後に命を落としてしまっていたような超低出生体重児(極めて小さく生まれた赤ちゃん)や、重篤な先天性疾患、難病を抱えた赤ちゃんの命を救うことができるようになりました。

高度な医療を提供するNICU(新生児集中治療室)で一命を取り留めた子どもたちは、状態が安定すると自宅へ退院します。医療技術の進歩によって「救命できる命」が増えた結果として、退院後に地域で日常的な医療的ケアを必要とする子どもたちが増加しているのです。これは医療の勝利であると同時に、彼らが地域社会で生きるための支援体制をどう構築するかという新たな課題を社会に突きつけています。

3. 家族を取り巻く環境と当事者の声(深刻な負担と就業問題)

命が助かった喜びとともに自宅での生活が始まりますが、医療的ケア児を育てる家族(とくに母親)には、想像を絶する心身の負担がのしかかります。当事者家族へのアンケート調査などから、リアルな課題が見えてきます。

24時間365日のケアと深刻な睡眠不足

医療的ケアは昼夜を問わず続きます。たとえば「たんの吸引」は、風邪を引いている時や体調が悪い時には数分おきに必要になることもあります。夜間であっても、人工呼吸器のアラームが鳴れば即座に飛び起きて対応しなければ命に関わるため、保護者は熟睡することができません。「子どもが退院してから数年間、朝まで通して眠れた日はない」と語る当事者も多く、慢性的な睡眠不足と疲労が大きな課題となっています。

母親の就業問題と経済的負担

もう一つの極めて深刻な課題が「家族の離職問題」です。医療的ケア児の介助者の多くは母親が担っていますが、日本の一般的な女性の就業率が70%を超えているのに対し、医療的ケアが必要な未就学児を持つ母親の就業率は著しく低くなっています。

対象者の属性就業率の目安就労希望率
女性一般(全体)約72〜75%
医療的ケア児の母親約27%〜47%約89%

※厚生労働省の検討会資料や各種研究調査(春木・荒木ら)のデータを基に作成

このデータが示す最も重要な事実は、「本当は働きたい(就労希望率約89%)」と願っているにもかかわらず、半数以上の母親が働くことを諦めざるを得ない環境にあるということです。

働けない最大の理由は「医療的ケア児を安全に預かってくれる施設(保育園や学校)が極めて少ないこと」にあります。一般的な保育園には看護師が常駐していないことが多く、「医療行為ができない」「安全を担保できない」という理由から入園を断られるケースが多発していました。

結果として、親がキャリアを諦めて一日中付きっきりでケアをしなければならず、世帯収入が減少する一方で、特殊なバギー(車椅子)の購入費や医療機器の電気代など支出は増え続け、経済的・精神的に追い詰められてしまう家族が少なくありません。

4. 2021年施行「医療的ケア児支援法(新法)」の3つの重要ポイント

このような過酷な現状や当事者家族たちの切実な声を国会に届ける運動が実を結び、2021年9月に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(通称:医療的ケア児支援法)」が施行されました。この法律は、当事者家族の生活を根本から支え直す画期的な内容を含んでいます。

最大の転換点は、国や地方自治体の対応がこれまでの「努力義務」から「責務(責任を持って果たさなければならない義務)」へと格上げされたことです。かつては自治体によって支援の充実度に大きな地域格差がありましたが、新法により「どこに住んでいても適切な支援を受けられる社会」を目指すことが法律上明記されました。

以下に、新法によって変わった3つの重要ポイントを解説します。

① 学校や保育園等への「看護師配置」の推進

各自治体は、保育園、幼稚園、小中高校などの教育・保育現場において、医療的ケア児が家族の付き添いなしで通えるようにする責務を負いました。具体的には、たんの吸引や経管栄養などの処置ができる看護師や、専門の研修を受けた保育士・介護福祉士などを施設に配置するための体制整備が進められています。これにより、親が付きっきりにならなくても子どもが単独で通学・通園できる環境が着実に広がりつつあります。

② 家族の「離職防止」を立法の目的に明記

法律の第一条(目的)に、医療的ケア児の健やかな成長を図ることと並んで、「その家族の離職の防止」という文言がはっきりと盛り込まれました。子どもの支援だけでなく、親のキャリアや人生、世帯の経済基盤を守ることも国や自治体の責任であることが初めて明文化された画期的なポイントです。

③ 「医療的ケア児支援センター」の全県設置

これまで家族は、医療のことは病院へ、福祉のことは役所へ、教育のことは学校や教育委員会へ…と、別々の窓口をたらい回しにされるという苦労を抱えていました。新法では、各都道府県に「医療的ケア児支援センター」を設置することが定められました。これにより、医療・福祉・教育・労働のあらゆる関係機関と連携し、家族からの相談をワンストップで受け付ける総合的な窓口が機能し始めています。

5. これからの課題と社会全体で支えるための仕組み

医療的ケア児支援法の施行により、日本の支援体制は間違いなく大きな前進を遂げました。しかし、法律ができたからといって翌日からすべての問題が解決するわけではなく、現場レベルでは依然として多くの課題が残されています。

とくに深刻なのが「支援を担う人材(看護師)の圧倒的な不足」です。保育園や学校に看護師を配置するための予算が自治体についても、小児の医療的ケアに対応できるスキルを持った看護師の採用自体が難航している地域が多く存在します。自宅に訪問してケアを行う「訪問看護ステーション」の拡充も急務です。

また、家族が休息を取るための「レスパイトケア(短期入所施設)」も恒常的に不足しています。数日だけでも子どもを安全な施設に預けて親が心身を休める時間を作ることは、虐待防止や家族の崩壊を防ぐためにも不可欠ですが、現状では数ヶ月前から予約が埋まっている地域も珍しくありません。さらに、親の関心がどうしても医療的ケア児に向きがちになることで、健康な兄弟姉妹(きょうだい児)が孤独感や我慢を強いられてしまうメンタルケアの問題も指摘されています。

医療的ケア児とその家族が地域で孤立することなく、安心して自分らしい人生を送れる社会を実現するためには、施設の拡充や専門職の育成だけでは不十分です。私たち一人ひとりが「障害の有無にかかわらず、共に生きるのが当たり前の社会」へと意識をアップデートし、地域全体で彼らを温かく見守り、理解する土壌を育てていくことが求められています。

この記事のポイント

  • 医療的ケア児とは:NICUなどを退院後も、自宅で人工呼吸器やたんの吸引、経管栄養などの医療行為(ケア)を日常的に必要とする子どもたちのこと。
  • 人数は20年で2倍以上に増加:医療技術の進歩で救われる命が増えた結果、2005年に約9,400人だった推計人数は、2024年には約2万1,000人にまで増加している。
  • 家族の深刻な負担:24時間体制のケアによる睡眠不足に加え、預け先不足から母親の就業率が低く(約27〜47%)、働きたくても働けない「離職問題」が大きな課題となっている。
  • 新法による前進:2021年施行の「医療的ケア児支援法」により、国や自治体の支援が「責務(義務)」に格上げ。学校への看護師配置やワンストップの支援センター整備が進められている。
  • 残された課題:制度の枠組みはできたものの、現場でケアを担う小児対応の看護師不足や、家族が休息を取るための短期入所施設(レスパイト)の不足など、実務レベルでの整備が急務となっている。

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この記事の著者

転職ノウハウなら!ジョブジョブ編集部

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