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日本の採用市場では、原則として求人に年齢制限を設けることが禁止されています。しかし、求人票で「35歳以下(長期勤続によるキャリア形成のため)」といった文言を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
「原則禁止なのに、なぜ年齢を制限できるの?」 「自社の求人でもこの例外規定を使えるのだろうか?」
このように疑問に思う採用担当者や求職者の方は少なくありません。この記事では、雇用対策法に基づく年齢制限の禁止ルールと、例外事由の代表格である「長期勤続によるキャリア形成」について、具体的な適用条件や求人票に記載する際の注意点を分かりやすく解説します。
目次
現在の労働市場において、求人募集や採用の際に年齢制限を設けることは「雇用対策法(現:労働施策総合推進法)」によって原則として禁止されています。
この法律の目的は、年齢に関わらず一人ひとりに均等な働く機会を提供し、個人の能力や適性に応じた公正な採用選考を行わせることにあります。そのため、求人票に「20代歓迎」「35歳まで」と直接記述することはもちろん、「若手中心の職場です」といった、実質的に高齢者を排除するような表現も一律で禁止されています。
もし正当な理由なく年齢制限を行っていると判断された場合、行政指導の対象となる可能性があるため、企業側は採用活動において慎重な対応が求められます。
原則禁止とされている年齢制限ですが、業務の性質や合理的な理由がある場合に限り、6つの例外事由(厚生労働省令で定められた例外)が認められています。その中で、一般企業が最も活用する頻度が高いのが「例外事由3号のイ」です。
「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」
この規定は、「企業が若者を一からじっくり育てて、将来の幹部候補や中核社員として定着させたい」という合理的な育成ニーズに応えるために用意されています。ただし、この例外を適用するには、単に「若い人が欲しいから」という理由だけでは認められず、非常に厳格な条件をすべてクリアする必要があります。
「長期勤続によるキャリア形成」を理由に年齢制限を設ける場合、以下の4つの条件をすべて満たしている必要があります。1つでも満たしていない場合、違法な年齢制限とみなされる可能性があるため必ず確認してください。
この例外規定は、長期間にわたって社内でキャリアを積んでもらうことを前提としています。そのため、契約期間に定めがある契約社員やパート、アルバイト、派遣社員などの募集には適用できません。基本的には「正社員」の募集が対象となります。
募集する職種において、特定の経験やスキルを求めないことが前提です。「未経験から自社の教育プログラムによって育成する」必要があるため、中途採用であっても新卒採用と同じように一から指導・教育する環境と処遇を用意しなければなりません。
法律上、明確に「〇歳まで」という数値が定義されているわけではありませんが、一般的には「35歳未満」や「40歳未満」など、長期的な育成が現実的に可能な年齢層(概ね30代まで)が対象とされます。50代の募集に対してこの事由を適用することは通常認められません。
これが最も見落としがちなポイントです。長期勤続によるキャリア形成を図るための募集である以上、「〇〇の業務経験3年以上」といった実務経験を応募条件に加えることはできません。経験者を求める場合は、この例外事由ではなく「経験やスキルの有無」を基準に選考を行うべきであり、年齢で区切ることはNGとなります。
求人票を作成する際、表現方法を誤ると求人媒体の審査に通らなかったり、法令違反と指摘されたりすることがあります。以下の表で、よくあるNG事例と正しい記載方法を確認しましょう。
| 項目 | NGとなる記載例(違法・不適切) | 正しい記載例(適法) | 解説 |
| 経験の有無 | 30歳以下の方 (営業経験2年以上必須) | 35歳以下の方 (職務経験不問・未経験歓迎) | 経験者を求める場合は、この例外事由を適用して年齢を制限できません。 |
| 雇用形態 | 契約社員募集:25歳まで (長期勤続によるキャリア形成) | 正社員募集:30歳以下の方 (長期勤続によるキャリア形成) | 期間の定めがある契約(契約社員等)には適用できません。 |
| 文言の省略 | 35歳までの方 | 35歳以下の方 (長期勤続によるキャリア形成を図るため) | 年齢を制限する理由(例外事由の文言)を求人票に明記する必要があります。 |
| 上限年齢の根拠 | 定年が60歳なので59歳まで募集 (長期勤続によるキャリア形成) | 35歳以下の方 (長期勤続によるキャリア形成を図るため) | 定年を理由にする場合は「例外事由1号(定年年齢を上限とする)」を適用します。 |
💡 重要なポイント
求人票に年齢制限を記載する際は、必ず**「〇歳以下(例外事由3号のイ:長期勤続によるキャリア形成を図るため)」**のように、理由となる文言をセットで明記しなければなりません。
「長期勤続によるキャリア形成」の条件を満たして求人を出せる場合でも、実際の採用実務においては以下の点に注意する必要があります。
経験不問での採用となるため、選考基準は「現在のスキル」ではなく「将来の可能性(ポテンシャル)」や「自社の企業文化へのマッチ度」になります。面接では、これまでの業界経験ではなく、意欲やコミュニケーション能力、学ぶ姿勢などを評価する仕組みをあらかじめ整えておきましょう。
求人票に「35歳以下」と記載していても、それ以上の年齢の方から応募が届くことがあります。その際、「年齢が上限を超えているから」という理由だけで一律に書類選考で落とすことは、トラブルの原因になりかねません。あくまで自社が提示している「未経験からスタートする処遇やキャリアパス」に合意できるかどうかなど、総合的な観点から選考を行う姿勢が大切です。
少子高齢化が進む現代において、年齢で応募枠を狭めることは、優秀な人材との出会いの機会を自ら損失している可能性もあります。ITスキルや特定の専門知識を持つシニア層・ミドル層が、即戦力として活躍できるケースも増えています。本当に「一からの育成」が必要なのか、それとも「スキルがあれば年齢は問わない」のか、募集背景を今一度社内で精査することをお勧めします。
求人における年齢制限は原則禁止ですが、「長期勤続によるキャリア形成(例外事由3号のイ)」を正しく適用すれば、将来の中核メンバーとなる若手人材を合法的に募集することが可能です。
しかし、そのためには「正社員であること」「未経験者向けの募集であること」などの厳格なルールを守らなければなりません。「とりあえず若い人が欲しいから」という安易な理由で設定すると、求人媒体に掲載できないばかりか、企業のコンプライアンス違反に繋がってしまいます。
自社の採用ターゲットと求める人物像を明確にし、法律に則った適切な求人作成を行うことで、ミスマッチのない効果的な採用活動を実現させましょう。
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