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薬剤師は本当に不足している?将来性と地域データから読み解く最新求人事情

薬剤師は本当に不足している?将来性と地域データから読み解く最新求人事情

「薬剤師は不足しているから就職に困らない」という話をよく耳にする一方で、「将来的には薬剤師は余る時代が来る」といった相反するニュースを見聞きして、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

これから薬剤師を目指す学生や、現在転職を考えている現役の薬剤師にとって、業界の本当の需要と供給のバランスを把握することは、将来のキャリアプランを描く上で非常に重要です。

本記事では、厚生労働省などが発表している最新の有効求人倍率や、都道府県別の偏在データ、施設ごとの就業人数の推移などの客観的なデータをもとに、薬剤師の雇用市場の現状を徹底的に解説します。さらに、なぜ人数が増加しているにもかかわらず「不足している」と言われ続けるのか、その構造的な理由や、今後の需給予測から見えてくる「これから求められる薬剤師像」についても詳しく掘り下げていきます。

1. 【現状】薬剤師の有効求人倍率と人数の推移

世間一般で言われている「薬剤師不足」は、実際のデータにどのように表れているのでしょうか。まずは雇用の需給バランスを示す有効求人倍率と、実際に働いている薬剤師の総数から現状を読み解いていきましょう。

依然として高い有効求人倍率

薬剤師の有効求人倍率は、全産業の平均と比較して依然として高い水準を維持しています。厚生労働省の「一般職業紹介状況」によれば、令和5年(2023年)3月時点での薬剤師の有効求人倍率は2.17倍となっています。これは、求職中の薬剤師1人に対して2件以上の求人が存在していることを意味します。同時期の国内の全職種の有効求人倍率の平均が1.32倍であったことを踏まえると、薬剤師の転職市場は非常に活発であり、依然として「売り手市場」であることが明確に分かります。

さらに、少し前の2021年時点のデータなどを見ると、有効求人倍率が3倍から7倍近い数値を示していた時期や調査結果もありました。近年は緩やかに供給側に傾きつつあるという見方もありますが、それでもなお、資格を持っていれば職に就きやすい環境が守られていると言えます。

薬剤師の総数は増加傾向にある

「求人倍率が高い=薬剤師の絶対数が減っている」と勘違いされがちですが、実は薬剤師の総数自体は年々増加しています。令和2年(2020年)12月末時点での全国の届出薬剤師数は約32.2万人であり、前回の平成30年(2018年)の調査から1万人以上(約3.4%)も増加しています。

国家試験の合格者は毎年輩出されており、資格保有者は順調に増え続けています。つまり、業界全体として「人が減っているから足りない」のではなく、「人が増えている以上に、薬剤師を必要とする職場や業務が増大している」というのが現在の市場の実態なのです。

施設・就業先別の薬剤師の分布

それでは、これら32万人以上の薬剤師はどのような場所で働いているのでしょうか。令和2年のデータに基づく施設別の従事者数と割合をまとめました。

勤務先・施設薬剤師数全体に対する割合
薬局188,982人58.7%
医療施設(合計)61,603人19.1%
└ 病院55,948人17.4%
└ 診療所5,655人1.8%
医薬品関係企業39,044人12.1%
衛生行政機関・保健衛生施設6,776人2.1%
大学5,111人1.6%

データ出典:厚生労働省調査(令和2年12月31日現在)

表から分かる通り、全体の約6割が調剤薬局で勤務しています。医薬分業の推進に伴い、平成6年頃から薬局で働く薬剤師の数は大幅に増加し続けています。一方で、病院などの医療施設で働く薬剤師は約2割にとどまっており、就業先ごとの人数の偏りが見られます。

2. 【地域・業態の偏在】数字で見る地域ごとの大きな格差

薬剤師市場を語る上で欠かせないのが「偏在(へんざい)」という問題です。日本全国どこでも等しく薬剤師が不足しているわけではなく、地域ごと、そして業態ごとに極端な需給の偏りが発生しています。

都道府県別の薬剤師数ランキング

地域によって薬剤師の充足度には大きな差があります。人口10万人あたりの薬剤師数(全国平均は198.6人)を都道府県別に見ると、「西高東低」の傾向がはっきりと表れています。

【人口10万人あたりの薬剤師数が多い都道府県 トップ5】

  1. 徳島県(238.6人) マイナビ薬剤師
  2. 東京都(234.9人) マイナビ薬剤師
  3. 兵庫県(233.9人) マイナビ薬剤師
  4. 広島県(221.2人) マイナビ薬剤師
  5. 香川県(216.4人) マイナビ薬剤師

【人口10万人あたりの薬剤師数が少ない都道府県 ワースト5】

  1. 沖縄県(148.3人) マイナビ薬剤師
  2. 福井県(157.0人) マイナビ薬剤師
  3. 青森県(161.2人) マイナビ薬剤師
  4. 山形県(167.8人) マイナビ薬剤師
  5. 福島県(171.0人) マイナビ薬剤師

データ出典:令和2年 厚生労働省調査

都市部である東京都や大阪府に薬剤師が集中するのは想像に難くありませんが、徳島県や西日本の各県でも全国平均を大きく上回っています。これは、その地域における薬学部の設置数や、地元への定着率などが大きく影響していると考えられます。逆に、東北地方や北陸、沖縄県などでは慢性的な薬剤師不足に陥っており、好条件で求人を出してもなかなか人が集まらず、薬局が営業時間を短縮せざるを得ないケースも発生しています。

病院薬剤師と薬局薬剤師の認識のギャップ

地域だけでなく、働く「業態」によっても人手不足の深刻さは異なります。特に深刻なのが「病院薬剤師」の不足です。

厚生労働省の調査によると、都道府県の病院薬剤師会の9割以上が「都道府県内の多くの地域で薬剤師不足が生じている」と回答しました。これに対し、薬局における不足感は約半数程度にとどまっており、行政や薬局側と、病院現場との間で深刻度に対する認識のギャップが浮き彫りになっています。

現代の病院薬剤師には、調剤室での薬のピッキングだけでなく、病棟での服薬指導や副作用のモニタリング、医師や看護師と連携する「チーム医療」への参画が強く求められています。しかし、十分な人員が確保できないため、病棟業務やチーム医療への貢献に支障が出ていると回答した病院が7割を超えているのが実態です。

3. 【構造的課題】なぜ「薬剤師不足」が続いているのか?

絶対数は増えているのに、なぜこれほどまでに現場では「人が足りない」という声が絶えないのでしょうか。そこには、薬剤師業界特有の構造的な課題が隠されています。

薬局数の増加に伴う人材の分散

もっとも大きな原因は、受け皿となる「調剤薬局」の急激な増加です。現在、全国の薬局数は約6万1,000軒を超えており、コンビニエンスストアの店舗数よりも多い状態です。

薬局が乱立したことで、増加した薬剤師が各店舗に分散してしまう現象が起きています。1つの薬局における1日あたりの平均勤務薬剤師数は2.58人ですが、「1.1〜2人」しか配置できないギリギリの体制で運営している店舗が最も多くなっています。少人数で店舗を回さなければならないため、一人でも欠勤や退職が出ると直ちに業務が回らなくなり、常に「人が足りない」という危機感を抱えながら運営している薬局が多いのです。

女性の割合の高さと多様な働き方

薬剤師は女性の割合が非常に高い職業であることも、市場の需給に影響を与えています。令和2年のデータでは、薬剤師全体の約61.4%(一部データでは約70%とも)が女性です。

女性が多いこと自体は素晴らしいことですが、労働力という観点で見ると、出産や育児といったライフイベントによる休職・離職が発生しやすいという側面があります。薬剤師の年齢層は30代が最も多く、まさに結婚や子育ての時期と重なります。フルタイムでの勤務が難しくなり、パートタイムや時短勤務を選択する人が増えるため、頭数(資格保有者数)は足りていても、実際の「実働時間(フルタイム換算)」で見ると現場のマンパワーが不足してしまうのです。

ドラッグストアや一般企業など採用ニーズの多様化

かつては病院か調剤薬局が主な就職先でしたが、現在では働き方が大きく多様化しています。特に大手ドラッグストア・チェーンは、調剤併設型の店舗を急速に増やしており、高収入を武器に強力な採用活動を行っています。

さらに、製薬企業での研究開発や学術・MR、さらにはCRO(医薬品開発業務受託機関)といった一般企業へ就職する薬剤師も少なくありません。資格を持ちながら薬剤師以外の仕事をする「潜在薬剤師」も一定数存在するため、見かけ上の有資格者数ほど現場の人手は潤っていないのが実情です。

4. 【将来予測】薬剤師の仕事の将来性と今後の需給動向

ここまでは現在の不足状況について解説してきましたが、これから数十年先を見据えた場合、薬剤師の市場価値はどのように変化していくのでしょうか。

将来的には「供給過多」になるとの予測も

最も衝撃的なのは、厚生労働省の「薬剤師の需給動向の予測に関する研究(平成30年度)」による予測です。この報告では、今後数年間は需要と供給のバランスが保たれるものの、長期的には薬剤師が過剰(供給過多)になると推計されています。

人口減少に伴い、処方箋の総枚数はいずれピークアウトし減少に転じると予測されています。一方で、大学の薬学部からは毎年一定数の薬剤師が供給され続けます。2025年時点の予測でも、需要約36.5万人に対して供給約35.5万人と拮抗してきており、AI(人工知能)や調剤機器の進化による業務の効率化も相まって、「薬をピッキングするだけ」の単純な業務に必要な人員は減っていくと考えられています。

都市部と地方で進む需給の二極化

ただし、全国一律に薬剤師が余るわけではありません。今後の市場で顕著になるのは「需給の二極化」です。

人気の高い都市部(東京、大阪、福岡など)や生活利便性の高いエリアでは、早々に薬剤師の供給が需要を上回り、就職競争が激化すると予想されています。一方で、過疎化が進む地方や交通アクセスの悪い地域では、将来にわたっても人材の確保が難しく、高い給与を提示しても人が集まらない状況が継続する可能性が高いのです。

これから「求められる薬剤師像」とは

薬剤師が「売り手市場」から「買い手市場」へと変化していく未来において、職業としての将来性を高めるためには、単なる「調剤マシーン」からの脱却が不可欠です。

今後価値が高まるのは、機械にはできない「対人業務」に特化したスキルを持つ薬剤師です。

  • 在宅医療への対応: 高齢化社会において、患者の自宅や施設を訪問して服薬管理を行うニーズは急増しています。
  • かかりつけ薬剤師としての機能: 患者一人ひとりの生活背景や体質を理解し、親身に相談に乗れるコミュニケーション能力。
  • チーム医療への参画: 医師、看護師、ケアマネージャーなど他職種と対等に議論し、薬の専門家として処方提案ができる高度な知識。

「どこでもいいから就職できる時代」から、「スキルを持つ薬剤師が選ばれる時代」へと業界全体がシフトしていく過渡期にあると言えます。

5. まとめ

今回は、薬剤師の求人倍率や地域別の偏在データをもとに、職業としての現状と将来性を解説しました。

現在のところ、有効求人倍率は依然として2倍を超えており、薬剤師不足は確実に存在しています。しかし、その内実は「絶対数の不足」ではなく、薬局の乱立による人材の分散や、女性比率の高さによる実働時間の減少、そして地域・業態による極端な偏在が原因です。

長期的には、薬剤師の供給が需要を上回る時代が訪れると予測されています。しかし、それは「薬剤師という職業の価値が下がる」ことを意味するわけではありません。むしろ、在宅医療や高度なチーム医療において、薬剤師の専門知識がこれまで以上に求められるようになります。

これから薬剤師を目指す方や転職を考えている方は、目先の給与や求人数だけでなく、「5年後、10年後に患者や地域から求められるスキル」を身につけられる環境を選ぶことが、キャリアの大きな成功に繋がるでしょう。

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この記事の著者

転職ノウハウなら!ジョブジョブ編集部

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