ジョブジョブ 転職ノウハウ

【医療・介護】失見当識(見当識障害)とは?症状や原因、家族ができる対応方法をわかりやすく解説

【医療・介護】失見当識(見当識障害)とは?症状や原因、家族ができる対応方法をわかりやすく解説

「最近、親が今日の日付や今の時間を間違えるようになった」「外出先から家に帰れなくなってしまった」「家族の顔を見ても誰だかわからないようだ」といったご家族の様子に、不安や戸惑いを抱えていませんか?

医療や介護の現場で、ご高齢者のこうした状態を指す言葉として「失見当識(しつけんとうしき)」または「見当識障害(けんとうしきしょうがい)」という専門用語が頻繁に使われます。認知症の初期症状としても非常に多く見られるため、介護に携わる方であれば必ず知っておきたい重要なキーワードです。

しかし、専門用語であるため「具体的にどのような症状なのか」「もし家族に症状が現れたらどう対応すればいいのか」と悩まれる方も多いでしょう。間違った対応をしてしまうと、ご本人の不安を煽り、症状を悪化させてしまう可能性もあります。

本記事では、失見当識(見当識障害)の基本的な意味から、代表的な3つの症状、引き起こされる原因、そしてご家族や介護者が実践できる正しい対応方法までを網羅的に解説します。この記事を読むことで、失見当識に対する正しい知識が身につき、ご本人もご家族も安心して過ごせるようなケアのヒントが得られるはずです。

1. 失見当識(見当識障害)とは?基礎知識をわかりやすく解説

まずは「失見当識」という言葉が持つ本来の意味や、医療・介護現場でどのように使われているのかを正しく理解しましょう。

見当識とは「現在の状況を正しく認識する機能」

「見当識(けんとうしき)」とは、自分が現在置かれている状況を正しく把握し、認識する脳の機能のことを指します。具体的には「今は何年の何月何日か(時間)」「自分は今どこにいるのか(場所)」「目の前にいる人は誰か(人)」といった、日常生活を送る上でごく当たり前とされる基本的な情報のことです。

私たちは普段、無意識のうちにカレンダーを見たり、窓の外の明るさを確認したり、周囲の風景を見たりすることで、この見当識を維持しています。しかし、脳の機能が低下すると、これらの情報を正しく処理できなくなり、自分が置かれている状況がわからなくなってしまいます。この見当識が失われた状態、あるいは障害された状態のことを「失見当識」または「見当識障害」と呼びます。

なぜ医療や介護の現場でよく耳にするのか?

医療や介護の現場において、患者さんや利用者さんの認知機能(脳の働き)を評価することは非常に重要です。その際、最も基礎的で確認しやすい指標となるのが「見当識」が保たれているかどうかです。

例えば、病院に入院した際や介護施設の利用を始める際、医師や看護師、ケアマネージャーが「今日は何日ですか?」「ここはどこですか?」と尋ねる場面に立ち会ったことがあるかもしれません。これは単なる世間話ではなく、失見当識の有無を確認し、認知機能の低下レベルを測るための大切な問診(スクリーニング)なのです。そのため、医療・介護の現場では日常的にこの言葉が飛び交っています。

2. 見当識障害の代表的な3つの症状(進行順)

見当識障害は、ある日突然すべての感覚が失われるわけではありません。一般的には「時間」→「場所」→「人」という順番で、段階的に症状が進行していくことが多いとされています。ここでは、それぞれの段階でどのような症状が現れるのかを具体的に解説します。

1. 時間の失見当識(今日が何日か、今が何時かわからない)

見当識障害の初期段階として最も早く現れやすいのが、時間に関する感覚の喪失です。最初は「今日が何月何日か」「何曜日か」といった情報が曖昧になることから始まります。定年退職などで日々のルーティンがなくなり、曜日感覚が薄れることは誰にでもありますが、失見当識の場合はそれが極端になります。

症状が進行すると、季節感や昼夜の区別すらつかなくなります。「真冬なのに薄着で外出しようとする」「夜中の3時なのに『朝ごはんの準備をしなきゃ』と起きてくる」「約束の時間を守れなくなる」といった行動が見られるようになります。ご家族にとっては「なぜこんな時間に?」と驚くような行動が増える時期です。

2. 場所の失見当識(自分がどこにいるのかわからない)

時間の見当識が低下した後に現れやすいのが、場所に関する見当識障害です。自分が今どこにいるのか、ここがどういう場所なのかが認識できなくなります。

初期の段階では、初めて訪れた場所や、あまり馴染みのない場所で道に迷うことが増えます。しかし進行すると、長年通い慣れたスーパーへの道や、最寄り駅から自宅への帰り道がわからなくなり、いわゆる「徘徊(はいかい)」につながる危険性が高まります。さらに重度になると、自分の家の中にいるにもかかわらず「私の家はここじゃない、家に帰る」と言い出したり、トイレの場所がわからずに別の部屋で排泄してしまったりすることもあります。

3. 人の失見当識(目の前の人が誰かわからない)

時間、場所の次に障害されるのが「人」に関する見当識です。これは認知症などがかなり進行した段階で見られる重い症状です。

目の前にいる人物が誰なのか、自分とどのような関係にあるのかがわからなくなります。最初は、たまにしか会わない親戚や知人の顔と名前が一致しなくなる程度ですが、進行すると同居している配偶者や子どもに向かって「あなたは誰ですか?」「泥棒だ!」と怯えたり、逆に自分の娘を「お母さん」と呼んだりするようになります。家族の顔を忘れられてしまうことは、介護をする側にとって非常に辛く、精神的なダメージが大きい症状と言えます。

3. 失見当識を引き起こす主な原因とは?

失見当識は病名ではなく、あくまで「症状」の一つです。では、なぜこのような症状が引き起こされるのでしょうか。主な原因として、以下の3つが挙げられます。

認知症(アルツハイマー型認知症など)

見当識障害の最も代表的な原因は、認知症です。中でも、日本の認知症患者の半数以上を占めるとされる「アルツハイマー型認知症」では、初期の段階から顕著に見当識障害(特に時間の障害)が現れることが特徴です。脳の神経細胞が徐々に死滅し、記憶を司る「海馬」などの萎縮が進むことで、新しい情報を記憶し、現在の状況と照らし合わせる機能が失われていきます。また、脳の血管が詰まったり破れたりして起こる「血管性認知症」や、「レビー小体型認知症」などでも見当識障害は起こります。

せん妄(急激な環境変化や体調不良によるもの)

認知症と間違われやすいのが「せん妄(せんもう)」です。せん妄とは、病気による高熱、脱水症状、薬の副作用、入院や引っ越しなどの急激な環境変化によって引き起こされる、一時的な意識障害のことです。

せん妄を発症すると、突然幻覚を見たり、興奮して暴れたりすると同時に、時間や場所の見当識が失われます。認知症が数ヶ月から数年かけてゆっくり進行するのに対し、せん妄は「数時間から数日単位で急激に発症する」という大きな違いがあります。原因となっている病気やストレスを取り除くことで、回復する可能性があります。

高次脳機能障害や精神疾患

交通事故や転倒による頭部外傷、脳卒中の後遺症などによって脳がダメージを受けた結果として生じる「高次脳機能障害」でも、見当識障害が現れることがあります。また、重度のうつ病や統合失調症などの精神疾患が原因で、現実と非現実の境界が曖昧になり、時間や場所の認識が歪んでしまうこともあります。

4. 【表で解説】加齢による「もの忘れ」と「失見当識」の違い

ご高齢のご家族に「日付の間違い」などが見られたとき、それが単なる加齢による「もの忘れ」なのか、認知症などに伴う「失見当識」なのかを判断するのは難しいものです。ここでは、その違いをわかりやすく表にまとめました。

比較項目加齢による「もの忘れ」(正常な老化)認知症による「失見当識・記憶障害」
忘れ方の特徴体験の「一部」を忘れる(例:朝ごはんのおかずを忘れる)体験の「全体」を忘れる(例:朝ごはんを食べたこと自体を忘れる)
日付や時間の認識パッと出てこないが、カレンダーや時計を見れば「あ、そうだった」と納得するカレンダーを見ても今日が何日か理解できず、季節外れの行動をとる
自覚の有無忘れていることへの自覚があり「最近物忘れがひどくて…」と気にする忘れている自覚がない(取り繕ったり、事実を否定したりする)
進行のスピード年齢相応で、急激には進行しない時間の経過とともに少しずつ、確実に進行していく
日常生活への影響メモを取るなどの工夫でカバーでき、生活に大きな支障はない進行に伴い、一人での生活や外出が困難になる

このように、単なるもの忘れはヒントを出せば思い出すことができますが、失見当識の場合は情報そのものが脳から抜け落ちてしまっているため、ヒントを出しても思い出すことができません。

5. 家族や介護者が知っておきたい!失見当識のある方への対応方法

ご家族が見当識障害の症状を見せたとき、周囲の対応一つでご本人の安心感は大きく変わります。間違った対応をすると、症状を悪化させる「BPSD(周辺症状:暴言、暴力、徘徊など)」を引き起こす原因にもなります。ここでは、心がけるべき対応のポイントを解説します。

決して否定せず、まずは本人の世界を受け入れる

最もやってはいけない対応が、事実を突きつけて強く否定することです。

例えば、真夜中に起きてきて「今から会社に行く」と言い出したとき、「今は夜中の2時だよ!会社なんてとっくに定年したでしょ!」と正論で怒っても意味がありません。ご本人の中では「今は朝であり、自分は現役で働いている」という世界が真実なのです。

頭ごなしに否定されると、ご本人は「自分は間違っていないのに、なぜ怒られるのか」と混乱し、悲しみや怒りだけが残ります。まずは「会社に行かなくちゃいけないんですね、お疲れ様です」と、本人の見ている世界を一度受け止め、同調することが大切です。

不安を取り除き、安心できる声かけを意識する

見当識が失われている状態は、例えるなら「言葉の通じない見知らぬ外国に、たった一人で置き去りにされたような状態」です。ご本人が一番強い不安と恐怖を抱えていることを理解しましょう。

「今は夜だから、お茶を飲んで少し休んでからにしませんか?」と優しく声をかけたり、別の話題(昔の楽しかった思い出や、好きな食べ物の話など)に気をそらしたりして、不安を和らげることが効果的です。安心感を与えることで、次第に落ち着きを取り戻すケースが多くあります。

カレンダーや時計を活用して環境を整える

症状がまだ軽度の場合、環境を整えることで見当識を補うことができます。

日めくりカレンダーを用意して毎朝一緒にめくる習慣をつける、数字が大きく見やすいデジタル時計や電波時計を部屋に置く、といった工夫が有効です。また、季節の行事(お正月、お花見、七夕など)の飾り付けをしたり、旬の食材を使った食事を提供したりすることで、自然な形で季節感を感じてもらうことも良いリハビリテーションになります。

介護者自身の心のケアも忘れずに

「毎日同じことを何度も聞かれる」「自分のことを忘れられてショックを受けた」など、見当識障害のある方を介護するご家族の精神的負担は計り知れません。イライラして怒ってしまい、後で自己嫌悪に陥ることも珍しくありません。一人で抱え込まず、同じ境遇の人と話したり、専門の相談窓口を利用したりして、ご自身の心の健康を保つことも重要です。

6. 症状が見られたら?早めの受診と専門機関への相談が鍵

「もしかして見当識障害かもしれない」と感じたら、様子を見るのではなく、早めに行動を起こすことが重要です。

受診すべきタイミングと適切な診療科

時間の感覚がおかしくなったり、帰り道がわからなくなったりする症状が数回続いた時点で、早めに医療機関を受診しましょう。受診先としては「物忘れ外来」や「神経内科」「精神科」「老年内科」が適しています。

前述の通り、急に症状が出た場合は「せん妄」やその他の身体的疾患(脳梗塞など)の可能性もあります。原因疾患を特定し、適切な治療を早期に開始することで、進行を遅らせたり、症状を改善したりできる可能性があります。

介護保険サービスの活用を検討する

受診と並行して、お住まいの市区町村にある「地域包括支援センター」に相談しましょう。地域包括支援センターは、高齢者の健康や介護に関する総合相談窓口です。

介護認定を受ければ、デイサービス(通所介護)や訪問介護などの介護保険サービスを利用できるようになります。デイサービスで専門のスタッフと関わりながらレクリエーションを行うことは、脳への刺激となり見当識の維持に役立ちます。また、ご家族の介護負担(レスパイトケア)を軽減するためにも、プロのサポートを積極的に取り入れましょう。

7. まとめ:失見当識は早期発見と正しい対応で進行を和らげよう

「失見当識(見当識障害)」は、時間、場所、人といった自分が置かれている基本的な状況がわからなくなる状態であり、認知症の中核症状としてよく見られます。

大切なご家族に症状が現れると、ショックを受けたり戸惑ったりするのは当然のことです。しかし、一番不安で混乱しているのはご本人であることを忘れないでください。事実を突きつけて否定するのではなく、ご本人の世界を否定せずに受け入れ、安心感を与えるコミュニケーションを心がけることが大切です。

症状に気づいた段階で「単なる老化だろう」と放置せず、早めに医療機関を受診し、地域包括支援センターなどの専門機関に相談してください。医療と介護の適切なサポートを活用しながら、ご本人もご家族も心穏やかに過ごせる環境を整えていきましょう。

なるほど!と思ったらシェアしよう!

この記事の著者

転職ノウハウなら!ジョブジョブ編集部

「転職ノウハウなら!ジョブジョブ編集部」は、医療、介護、保育の求人サイト「ジョブジョブ」の運営メンバーによる記事編集部門です。医療・介護・保育・福祉・美容・ヘルスケアの仕事に関わる方に向けた、今後のキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

あわせて読みたい記事

おすすめの新着求人