育児時短就業給付とは?条件・申請方法・支給額まで徹底解説!【保存版】
育児と仕事の両立に悩むパパ・ママにとって、働き方を調整できる「育児短時間勤務制度」は心強い味方です。そしてこの制度を経済的に支援するのが「育児時短就業給付」。この記事では、制度の概要から支給要件、申請の流れ、注意点、そして今後の展望まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
目次
1. 育児時短就業給付とは?

育児時短就業給付とは、育児と就労を両立するために短時間勤務を選んだ労働者に対し、減少した賃金の一部を補填する目的で支給される給付金です。雇用保険に基づく制度の一つで、厚生労働省が所管しています。
制度の背景と目的
現代の日本社会では、出産・育児によって職場を離れる女性が多く、少子化や労働力不足の一因ともなっています。これに対し国は、「育児休業制度」に加えて「育児短時間勤務制度」を整備。さらに、育児中の労働者が経済的不安からフルタイム復帰を余儀なくされるのを防ぐために、この給付制度が創設されました。
この制度は、1歳を超えて2歳未満の子を育てる労働者を対象とし、育児休業明けに時短勤務を選択した場合に、一定の条件を満たすことで賃金減額分の一部が給付されるというものです。
法的根拠
育児時短就業給付は、雇用保険法に基づく「育児休業給付」の一部として位置づけられており、2014年の法改正により新設されました。これにより、育児休業後も柔軟な働き方が保障されるようになっています。
制度の特徴
- 対象者は雇用保険の一般被保険者であり、育児短時間勤務制度を利用している必要があります。
- 支給対象となるのは、原則として所定労働時間の3/4未満で働く人(例:8時間勤務 → 6時間勤務など)。
- 賃金の低下が生じた場合にのみ支給対象となり、支給額は減額分に応じて決定されます。
- 実際の給付は2か月ごとに申請・支給され、労働者本人ではなく勤務先を通じて手続きされるケースが一般的です。
なぜ重要なのか?
育児時短就業給付は、単なる経済的支援にとどまりません。次のような意義も含まれます:
- 育児とキャリアの両立を可能にする
- 子どもとの時間を大切にできる環境づくり
- 女性の職場復帰を促進し、職場定着率を高める
- 男性の育児参加促進(男女ともに制度利用可能)
その他の名称・表記
この制度は正式名称が定まっておらず、以下のように呼ばれることもあります。
- 育児時短給付金
- 育児短時間就業給付
- 時短勤務給付制度 など
制度の名称が職場によって異なる場合もあるため、「育児休業後の短時間勤務に伴う給付制度」として確認するとスムーズです。
2. 育児時短就業給付の支給対象となる人の条件

育児時短就業給付を受けるためには、単に育児中で短時間勤務をしていればよいわけではありません。雇用保険の制度に基づく明確な条件が設定されており、これらをすべて満たして初めて支給対象となります。以下に具体的な要件を詳しく見ていきましょう。
支給対象者の主な条件
① 雇用保険の「一般被保険者」であること
育児時短就業給付は雇用保険制度に基づく給付であるため、原則として「一般被保険者(正社員・契約社員・パートタイムなど)」であることが条件です。
- 週所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
- 雇用契約が継続的である
※自営業・フリーランス・個人事業主は雇用保険の対象外のため、給付対象となりません。
② 1歳から2歳未満の子を養育していること
この給付金は、育児休業終了後に子どもが1歳を過ぎた後~2歳の誕生日の前日までの間に短時間勤務をしている場合が対象です。
- 育児休業中は「育児休業給付金」が支給されますが、その後の時短勤務に対する支援がこの制度です。
③ 所定労働時間の3/4未満で勤務していること
「短時間勤務」とみなされるには、以下の基準を満たす必要があります。
- 所定労働時間の3/4未満で勤務している(例:所定8時間 → 6時間勤務など)
- 1日4時間未満など極端に短い場合は、労働日数や総労働時間とのバランスも考慮される
④ 賃金が減少していること
給付の前提として、「育児短時間勤務の実施により賃金が減少していること」が必要です。
- 時短勤務により、育児休業前6か月の平均賃金と比較して給与が減少している
- 給与明細や賃金台帳などの客観的な証拠が必要となります
⑤ 支給対象期間内に申請が行われていること
- 支給申請は2か月ごとに行う必要があります。
- 支給対象期間に含まれる日数について、申請漏れや期限超過があると不支給となる可能性があります。
注意が必要なケース
▸ 転職・再就職した場合
- 雇用保険の被保険者期間がリセットされるため、新しい職場で再び給付対象になるには条件を再確認する必要があります。
▸ 派遣社員の場合
- 派遣元の事業主が雇用保険に加入させていることが前提
- 派遣先との調整も必要になるケースがあるため、早めの相談が重要です
▸ 育児休業中に時短勤務をしていない場合
- 「育児休業後」に「時短勤務に移行した」ことが条件です。
- 育児休業を取得せずにそのまま時短勤務へ移行した場合は、支給対象外になることがあります。
3. 育児時短就業給付の支給額と計算方法

育児時短就業給付の支給額は、短時間勤務によって減額された賃金に対して、その一部を補填するという形で決まります。ここでは、実際の計算式や具体例を交えながら、よりわかりやすく解説します。
支給額の計算式
育児時短就業給付の支給額は、以下のように計算されます。
休業開始前賃金日額 × 支給率 × 対象労働日数
この「賃金日額」や「支給率」は、雇用保険制度の規定に基づいており、年度ごとに見直されることがあります。
賃金日額とは?
「賃金日額」とは、育児休業前6か月間の賃金総額を180日で割った金額です。たとえば、休業前6か月の賃金が合計180万円であった場合、賃金日額はおおよそ10,000円になります。
(180万円 ÷ 180日 = 10,000円)
この金額が、支給額の算定の基礎になります。
支給率はどのくらい?
2024年現在の支給率は「13%」です。つまり、賃金が減額された分に対して13%が支給される計算です。
なお、将来的には支給率が引き上げられる可能性もあり、最新情報の確認が必要です。
支給日数(対象労働日数)について
支給の対象となるのは、短時間勤務を実施した「実労働日数」です。たとえば、1か月のうち20日勤務した場合、その20日が支給対象日数となります。
対象外となる日には以下のようなものがあります。
・欠勤日、休日
・育児のために完全に勤務していない日
・就労実績のない日
対象労働日数が少ないと支給額も少なくなるため、就業実態を正確に記録しておくことが大切です。
支給額の具体例
以下は、具体的な事例です。
例1:時給1,500円の正社員が月20日勤務、時短で月給が30,000円減少
→ 減額分30,000円 × 支給率13% = 月給付額は3,900円程度
例2:月給制の社員で、短時間勤務により毎月5万円の収入減
→ 50,000円 × 13% = 6,500円程度が月の給付金となる
なお、賃金減少額が小さい場合、支給額も少なくなるため、「本当に申請する価値があるか」迷う方もいますが、1年間受け取るとまとまった額になるため、ぜひ活用を検討しましょう。
賃金の上限・下限
支給額には制度上の「日額上限」「日額下限」が設けられています。これにより、高所得者であっても一定の上限を超える支給は行われません。
この上限額や下限額は毎年見直されており、詳細はハローワークの公式資料や厚生労働省のWebサイトで確認することができます。
非課税かどうか?
育児時短就業給付は、雇用保険による給付金の一種であり、「非課税所得」に該当します。そのため、所得税や住民税の対象にはならず、手取り額そのままで受け取れるのが特徴です。
4. 育児時短就業給付の申請方法と手続きの流れ
育児時短就業給付を受け取るためには、勤務先と連携しながら、ハローワークに対して所定の申請手続きを行う必要があります。ここでは、申請の準備から支給までの具体的なステップを順を追って解説します。

ステップ1:育児短時間勤務の申し出(社内手続き)
まずは、育児時短就業給付の前提となる「育児短時間勤務制度」の利用を、職場に申し出る必要があります。
- 申し出は原則として「1か月以上前」に行うことが望ましい
- 社内規程や育児・介護休業法に基づき、会社側は原則として時短勤務を認める義務があります
- 「短時間勤務申請書」などの社内書類を提出するケースが多い
ここで重要なのは、開始日・勤務時間数・週労働日数などが明確に記載されていることです。
ステップ2:会社からハローワークへの書類提出
労働者が短時間勤務を開始した後、勤務先は「短時間勤務開始届」を所轄のハローワークに提出します。
主な提出書類には以下が含まれます。
- 短時間勤務開始届
- 賃金台帳(休業前6か月分)
- 出勤簿または勤務実績表
- 雇用契約書または就業規則(短時間勤務の条件を確認するため)
この段階では、労働者本人が手続きを行うことは少なく、企業の人事・労務部門が中心となって対応します。
ステップ3:2か月ごとの支給申請
育児時短就業給付は、「2か月ごとに1回」の頻度で申請・支給されます。これを「支給単位期間」と呼びます。
支給申請には以下のような書類が必要です。
- 育児時短就業給付金支給申請書(指定様式)
- 賃金台帳(支給対象期間中の分)
- 出勤簿・タイムカード等(勤務実績の確認用)
- 銀行口座情報(本人名義)
- 雇用保険被保険者証(初回のみ)
これらの書類は、勤務先が取りまとめてハローワークに提出するのが一般的です。個人で申請する場合は、事前にハローワークへの相談が必要です。
ステップ4:ハローワークでの審査・支給
申請書類が受理されると、ハローワークでの審査が行われます。審査期間は概ね2〜3週間程度です。
問題がなければ、指定口座に育児時短就業給付金が振り込まれます。支給は原則として2か月に一度まとめて行われるため、計画的に家計を考えることが重要です。
支給終了の手続き
以下のような場合には、支給が終了し、別途手続きが必要になります。
- 子どもが2歳の誕生日を迎えるとき
- フルタイム勤務に復帰したとき
- 退職や転職をしたとき
支給終了の際には「終了届」の提出が必要となるため、会社またはハローワークに相談してください。
申請期限に注意
各支給単位期間の終了後、2か月以内に申請しなければならないという期限があります。期限を過ぎると給付を受け取れなくなるため、社内の担当者と密に連携を取りましょう。
5. 育児時短就業給付の支給期間と注意点
育児時短就業給付は、対象期間が明確に定められており、継続的に支給を受けるにはいくつかの重要なポイントに注意が必要です。このセクションでは、給付が受けられる期間の概要と、利用者が注意すべき点を丁寧に解説します。
支給期間の基本ルール
育児時短就業給付が支給される期間は、以下の通りです。
支給開始日:育児休業の終了日の翌日以降で、短時間勤務を開始した日
支給終了日:子どもが2歳の誕生日の前日まで
つまり、育児休業を1歳まで取得した後、そのまま短時間勤務に移行する場合、支給対象となるのは**おおむね「1歳から2歳までの1年間」**です。
なお、子どもが1歳6か月または2歳まで育児休業を延長している場合には、短時間勤務の開始時期も後ろ倒しになります。支給開始日もそれに伴い変更されます。
支給の単位と頻度
育児時短就業給付は、**2か月ごとに1回(2か月単位)**の支給が基本です。
- たとえば、4月1日~5月31日が支給単位期間となる場合、その期間中の勤務日数に応じた給付金がまとめて6月頃に支給されます。
- 各支給単位期間が終了した後、2か月以内に申請しなければ無効となるため、スケジュール管理が非常に重要です。
支給が打ち切られるケースとは?
以下のようなケースでは、支給対象期間中であっても、給付が打ち切られたり、支給額が減少したりすることがあります。
- 短時間勤務を終了し、フルタイム勤務に戻った場合 → 所定労働時間の3/4以上になった時点で給付対象外になります。
- 退職・転職をした場合 → 雇用関係が切れたタイミングで支給終了となります。転職後に再申請する場合は、条件の確認が必要です。
- 勤務実績が確認できない場合 → 出勤簿や賃金台帳に不備があると、支給が保留または却下されることがあります。
- 不正受給が発覚した場合 → 給付金の返還を求められ、場合によってはペナルティが課せられることもあります。
注意点①:事前準備と職場との調整
育児時短就業給付の申請には、会社側の協力が不可欠です。特に以下の点に注意しましょう。
- 短時間勤務の開始時期や内容を明確に文書で残す
- 勤務形態に応じた勤怠記録の整備(出勤簿・タイムカードなど)
- 人事・総務部門との連携(書類作成・提出のサポートを得る)
申請漏れや不備が生じないよう、勤務先と定期的に進捗を共有することが大切です。
注意点②:支給額の見積もりと家計計画
育児時短就業給付はあくまで「賃金の13%」程度であり、大きな金額ではありません。そのため、生活費や育児費用にどれだけ充てられるかを事前に計画しておく必要があります。
- 家計全体でどのくらいの補填になるか
- 育児休業給付金終了後の収入の見通し
- 配偶者の収入や自治体の支援制度との併用
これらを踏まえた上で、賢く活用していくことが望ましいです。
注意点③:制度変更への備え
育児支援制度は、少子化対策や働き方改革の一環として見直しが続いています。将来的には以下のような変更が予想されます。
- 支給率の引き上げ
- 対象年齢の拡大
- 短時間勤務の柔軟化(週の所定労働日数の変動など)
制度の変更により、支給条件や額が変わることもあるため、最新の情報を定期的にハローワークや厚労省のサイトで確認する習慣が重要です。
6. 育児休業給付金との違いとは?

育児と仕事の両立を支援する制度には、主に「育児休業給付金」と「育児時短就業給付」の2種類があります。これらは似た目的を持ちながらも、対象期間・働き方・給付条件・支給金額などに違いがあり、それぞれの特徴を理解することが制度活用のカギとなります。
以下では、両者の違いをわかりやすく比較し、利用のタイミングや併用の可否についても解説します。
対象期間の違い
育児休業給付金は、原則として「子が1歳になるまで(一定の条件を満たせば最大2歳まで)」の育児休業中に支給されます。一方、育児時短就業給付は「子が1歳から2歳になるまで」の期間、職場復帰して短時間勤務をしている人が対象です。
つまり、育児休業給付金は「育児のために就労していない状態」、育児時短就業給付は「育児のために短時間で働いている状態」を支援する制度です。
就労条件の違い
育児休業給付金を受け取るには、育児のために原則として働いていない(無就労)状態である必要があります。ただし、育児と両立できる軽微な就労(週10時間未満など)は例外とされています。
対して育児時短就業給付は、実際に就労していることが前提となります。週20時間以上かつ所定労働時間の3/4未満の短時間勤務が条件です。就労しながらの給付である点が大きな違いです。
支給金額と計算方法の違い
育児休業給付金は、原則として休業前賃金の67%(6か月経過後は50%)が支給されます。これは比較的高めの支援額です。
一方、育児時短就業給付は、賃金の減少分に対して13%が支給されます。減額分がベースとなるため、金額としては少なめですが、働きながら受け取れるという利点があります。
手続きと支給単位の違い
育児休業給付金は育児休業の取得開始時に申請を行い、その後2か月ごとに給付を受ける形式です。申請は会社を通じて行うことが多いです。
育児時短就業給付も同様に2か月単位で支給されますが、開始時に「短時間勤務開始届」の提出が必要です。実際の勤務実績に基づいて支給されるため、勤務日数や労働時間の記録が重要です。
併用の可否について
両制度は重複して同時に受け取ることはできませんが、時期をずらしての利用は可能です。
具体的には、
・子が1歳までは「育児休業給付金」
・1歳以降、短時間勤務を開始したら「育児時短就業給付」
というように、段階的に切り替えて制度を活用することで、最大で2年間の経済的支援を受けることが可能です。
制度選択のポイント
どちらの制度を使うべきかは、以下のような点を考慮して決定しましょう。
- 育児に専念したい → 育児休業給付金
- 早めに仕事に復帰したいがフルタイムは難しい → 育児時短就業給付
- 家計の状況や職場環境によって柔軟に使い分けることが重要です
また、制度を活用するためには、育児休業や短時間勤務の申請をタイミングよく行い、申請漏れを防ぐことが不可欠です。
7. 育児時短就業給付はどんな人が活用している?事例紹介
育児時短就業給付は、比較的新しい制度ではありますが、すでに多くの家庭で活用され始めています。特に、育児と仕事の両立を真剣に考える共働き世帯や、キャリア継続を望むママ・パパたちにとって、大きな支えとなっています。
ここでは、実際に育児時短就業給付を利用している人たちの代表的なケースをいくつか紹介しながら、どのような働き方や家庭環境にマッチしているのかを明らかにします。
ケース1:正社員のママが短時間勤務に移行
東京都在住、30代女性。第一子の出産を機に育児休業を取得。1歳の誕生日を迎えたタイミングで短時間勤務に復帰。フルタイム時代は9時~18時勤務だったが、時短勤務では9時~15時勤務に変更。月の給与が約5万円減少したため、育児時短就業給付を申請し、月6,500円程度の給付を受けている。
このケースでは、時短勤務により保育園への送迎や夕食準備の時間を確保しつつ、職場復帰をスムーズに実現できている。企業側の支援体制も整っていたため、手続きも円滑に行われた。
ケース2:共働き家庭でパパが時短勤務を活用
神奈川県在住の共働き夫婦。第二子誕生後、母親が1年間の育児休業を取得。その後、父親が短時間勤務を選択。職場に理解があり、時短勤務が可能な部署に異動して9時~16時の勤務体制に。月収が約3万円減ったが、その分を育児時短就業給付で一部補填。
この家庭では、夫婦で育児負担を分担し、家族との時間を確保することを優先。男性の制度利用がまだ少ない中での先進的な事例といえる。子どもとの時間を持ちつつ、キャリアも維持している。
ケース3:パートタイムから正社員に切り替えたが時短勤務を継続
千葉県在住の女性。出産前はパート勤務だったが、育児休業明けに正社員として復帰。しかし子どもが1歳を過ぎたばかりで保育園との兼ね合いもあり、いきなりのフルタイム復帰は難しいと判断し、短時間勤務でスタート。
給与が以前よりも上がったが、フルタイムに比べての減額分があるため、育児時短就業給付を活用。育児と仕事を少しずつバランスを取りながら整えていくための「移行期間」として制度を有効利用している。
ケース4:シングルマザーが制度を活用して職場復帰
大阪府在住の20代女性。シングルマザーとして1歳児を育てながら復職。実家の支援を受けられないため、フルタイム勤務が困難で、短時間勤務を選択。給与は減るが、育児時短就業給付により毎月数千円を補填できており、経済的不安を軽減できている。
勤務先が子育て支援に積極的で、制度の説明や申請サポートが充実していたことも、安心して制度を活用できた要因の一つ。
これらの事例から分かるように、育児時短就業給付は、フルタイム復帰が難しいけれどもキャリアを継続したいと考える多くの人にとって、非常に有効な制度です。
制度を活用することで、家族との時間、育児の充実、職場での地位の維持など、さまざまな面で「バランスの取れた働き方」を実現することができます。
8. 育児時短就業給付に関するよくある質問(Q&A)
育児時短就業給付は比較的新しい制度であるため、利用を検討している方からさまざまな疑問が寄せられています。ここでは、実際によくある質問をピックアップし、具体的かつわかりやすく回答します。
Q1. 派遣社員でも育児時短就業給付を受けられますか?
A. 可能です。ただし、雇用保険に加入していることが前提です。また、派遣社員の場合は、雇用主は派遣元となるため、派遣元が短時間勤務制度を整えている必要があります。派遣先との連携も必要となるため、早めに派遣元企業へ相談してください。
Q2. パートタイマーでも対象になりますか?
A. 条件を満たしていれば対象になります。具体的には、雇用保険に加入していること、週20時間以上の勤務があること、賃金が短時間勤務によって減少していることなどが条件です。パートタイマーであっても制度を活用することが可能です。
Q3. 給付金はいつ支給されますか?
A. 育児時短就業給付は2か月に1度のペースで支給されます。支給単位期間が終了した後、書類の審査を経て、おおよそ1〜1.5か月後に指定口座へ振り込まれます。初回はやや時間がかかることもあります。
Q4. 転職した場合はどうなりますか?
A. 転職した場合、新たな勤務先でも雇用保険に加入しており、引き続き短時間勤務を行っていれば、育児時短就業給付の申請は可能です。ただし、前職の勤務実績が活用できない場合があるため、転職前にハローワークへ相談しておくことをおすすめします。
Q5. フルタイム勤務に戻す予定ですが、一時的な短時間勤務でも利用できますか?
A. 利用できます。ただし、支給対象となるのは短時間勤務をしていた期間のみです。途中でフルタイム勤務に戻した場合、そこからは給付対象外になります。また、1か月単位での勤務実績が審査されるため、申請タイミングにも注意が必要です。
Q6. 賃金が少ししか減っていない場合でも支給されますか?
A. 減額分が確認できれば支給対象になりますが、減額額が小さいと支給額も少額になります。支給額は賃金の減少分に対して13%相当となるため、実際にいくら支給されるかは勤務状況によって異なります。
Q7. 給付金は課税対象になりますか?
A. 育児時短就業給付は雇用保険に基づく給付金のため、所得税や住民税の対象外となります。つまり、非課税です。支給された金額をそのまま手取りとして受け取ることができます。
Q8. 夫婦で交互に短時間勤務をして、それぞれ給付を受けることは可能ですか?
A. 条件を満たしていれば可能です。ただし、それぞれが雇用保険に加入していて、短時間勤務の実績がある必要があります。交代で取得する場合でも、各自が支給対象条件を満たす必要がある点にご注意ください。
Q9. 会社が制度を把握していない場合はどうしたらいいですか?
A. まずはハローワークに相談し、制度の概要を説明してもらう資料をもらいましょう。そのうえで職場の人事・労務担当者に共有することで、正しい手続きを進めることができます。制度は法律に基づくものであり、会社が拒否することは基本的にできません。
9. 育児時短就業給付の申請時の注意点と落とし穴
育児時短就業給付を受け取るためには、いくつかの条件を満たすだけでなく、申請のタイミングや書類の準備、職場との連携などにも十分な注意が必要です。ここでは、申請時にありがちなミスや見落としがちなポイントを「注意点」と「落とし穴」に分けて詳しく解説します。
注意点1:申請期限を守る
育児時短就業給付の申請は、2か月ごとの支給単位期間ごとに行われます。申請期限は、支給単位期間の終了から2か月以内です。これを過ぎると、その期間の給付は一切受け取れなくなります。たとえば、4月〜5月分の申請は7月末までに行う必要があります。職場の人事担当と連携して、忘れずに申請を行うようにしましょう。
注意点2:賃金台帳や出勤簿の整備
給付金の支給可否や金額の計算は、勤務実績に基づいて行われます。そのため、賃金台帳や出勤簿、タイムカードなどの記録が正確に整備されていないと、支給額が誤って算出される、あるいは支給されないといったトラブルが発生する可能性があります。勤務先に確認のうえ、書類の保存と確認を徹底しておきましょう。
注意点3:会社の協力が不可欠
申請には、勤務先が提出する書類(短時間勤務開始届や支給申請書など)が必要です。制度に不慣れな企業や小規模な事業所では、制度の存在を知らない、あるいは申請に対応できないケースもあります。そのような場合には、本人が制度の概要や必要書類を説明できるように準備し、ハローワークからの案内資料を活用することが有効です。
注意点4:支給対象外の日に注意
育児時短就業給付の支給対象となるのは、実際に短時間勤務を行った日です。有給休暇、欠勤日、育児のための特別休暇など、就労実績が確認できない日は支給対象外となります。支給対象日数が不足すると、給付額が減るだけでなく、場合によっては不支給になることもあります。
注意点5:途中でフルタイムに戻ると支給停止
育児短時間勤務の途中で通常のフルタイム勤務に戻った場合、その日から育児時短就業給付は支給停止となります。再び短時間勤務に戻しても、自動的に再開されるわけではありません。復帰時期や勤務時間の変更がある場合は、事前にハローワークへ相談し、必要に応じて再申請を行いましょう。
落とし穴1:制度の併用や切り替え時のミス
育児休業給付金から育児時短就業給付への切り替えはスムーズに見えますが、実際には書類や手続きが別であるため、切り替えのタイミングで申請漏れが起きやすいポイントです。「もう一方の制度が終わったから自動的に支給されるだろう」と思い込まず、切り替え時には必ず新たな申請手続きが必要になります。
落とし穴2:条件の誤解による申請ミス
例えば、「短時間勤務をしているから自動的に給付対象だと思っていた」というケースがありますが、所定労働時間の3/4未満という基準を満たしていないと支給されません。たとえ本人が時短のつもりでも、制度上はフルタイム扱いとなることがあるため、勤務時間の設定は要確認です。
落とし穴3:転職や異動で申請権利が消える
転職や部署異動によって雇用契約内容や労働時間が変更になると、給付の前提が変わってしまうことがあります。特に、異動先で時短勤務制度が使えない場合や、雇用保険の継続加入が確認できない場合には、支給が打ち切られる可能性があるため注意が必要です。
10. 育児時短就業給付の今後の動向と制度改正の見通し
育児時短就業給付は、子育てと仕事の両立を支援する重要な制度として、今後さらに注目されていくと考えられます。近年の少子化対策や働き方改革の流れの中で、制度の改正や対象の拡充が検討されており、今後の動向を把握しておくことは非常に重要です。
まず、国の少子化対策と密接に関係している点に注目すべきです。育児休業や保育支援などと並び、育児時短就業給付は、子どもを産み育てやすい社会の実現に向けた一手と位置づけられています。
現在、厚生労働省では育児支援制度全体の見直しが行われており、以下のような制度改正が今後の焦点となっています。
支給率の引き上げ
現在の支給率は賃金の減額分の13%ですが、家計補填の実効性を高めるために支給率の引き上げが議論されています。これにより、時短勤務を選択しやすくなり、より多くの家庭で制度が活用されるようになる可能性があります。
対象年齢の拡大
現状は「子どもが1歳から2歳になるまで」の1年間が対象期間ですが、保育園の空き状況や小1の壁と呼ばれる育児の転換点などに対応するため、支給対象の子どもの年齢上限を引き上げる方向での検討が進められています。
柔軟な勤務形態への対応
現在の制度では、所定労働時間の3/4未満である必要がありますが、これを週単位や月単位で柔軟に判断する仕組みの導入も検討されています。これにより、在宅勤務や時差勤務、変形労働時間制度など多様な働き方にも対応しやすくなる見込みです。
男性の利用促進
近年は男性の育児参加が推奨される中で、育児時短就業給付の男性利用率が低いことが課題とされています。今後は男性にも積極的に制度を利用してもらうため、周知や啓発活動、さらには制度設計の見直しが行われる可能性があります。
デジタル化による手続きの簡略化
育児関連給付制度においては、煩雑な申請手続きが利用を妨げる一因とされてきました。今後、マイナポータルや電子申請システムの導入・連携が進められることで、申請者の負担が大幅に軽減されることが期待されています。
今後の制度改正のスケジュールについては、厚生労働省の「子ども・子育て支援制度見直し」に関する審議会や、政府の骨太方針、予算編成に関する議論の中で発表される予定です。
利用を検討している方は、厚生労働省やハローワークの最新情報をこまめにチェックし、制度の変更に柔軟に対応できるよう備えておくと安心です。
11. まとめ:制度を活用して賢く育児と仕事を両立しよう
育児と仕事の両立は、現代の共働き世帯や子育て中の家庭にとって、避けて通れない大きなテーマです。その中で「育児時短就業給付」は、働く親が無理なく育児とキャリアを両立させるための心強い支援制度です。
この制度を活用する最大のメリットは、育児休業後の復職をスムーズにしながら、子どもとの時間も大切にできる点にあります。フルタイムではなく、短時間勤務という選択肢を取りながらも、減収を少しでも補える仕組みがあることで、心理的・経済的な負担を軽減できます。
さらに、今後は支給率の引き上げや対象年齢の拡大、手続きのデジタル化など、利便性と支援度を高める方向での制度改正が期待されており、ますます使いやすくなる可能性が高まっています。
ただし、制度を正しく利用するためには、条件や申請のタイミング、職場との連携、書類の準備など、事前の情報収集と段取りが非常に重要です。ハローワークや勤務先の担当者とよく相談しながら、計画的に進めることが成功のカギとなります。
また、共働き夫婦やシングルマザー・ファザーなど、さまざまな家庭形態に対応可能な柔軟な仕組みであることも、この制度の魅力です。育児休業給付金と組み合わせることで、最大2年間の支援を受けることができる点も見逃せません。
育児と仕事、どちらも大切にしたい。そんな願いを現実に近づけてくれるのが育児時短就業給付です。この制度を上手に活用し、自分らしい働き方と家族との時間の両立を実現していきましょう。
今のあなたの選択が、これからの育児やキャリア、家族の幸せにつながる大切な一歩となります。制度を「知ること」「使うこと」が、よりよい未来のための第一歩です。
厚生労働省のHPでも育児時短就業給付についての詳しい紹介PDFがありますので参考にしてみてください。
この記事の著者
転職ノウハウなら!ジョブジョブ編集部
「転職ノウハウなら!ジョブジョブ編集部」は、医療、介護、保育の求人サイト「ジョブジョブ」の運営メンバーによる記事編集部門です。医療・介護・保育・福祉・美容・ヘルスケアの仕事に関わる方に向けた、今後のキャリアを考えるうえで役立つ情報をお届けしています。
関連する記事が見つかりませんでした。
